2020年7月8日水曜日

「長崎行役日記」長久保赤水著 を読んだ

 長久保赤水は言わずとしれた、
『日本輿地路程全図』(にほんよちろていぜんず)の著者(安永3年(1774年))。

 1767年赤水50歳のとき、漂流民の引き取りのため庄屋の代理として水戸藩の役人に随行して長崎往復の日記。国会図書館デジタルアーカイブで読むことができます。

 水戸から江戸に出て途中瀬戸内で舟に乗るとはいえ、長崎まで往復徒歩。
当時のこういった日記などを読むと、内容よりも彼らの健脚ぶりにまず圧倒されます。
赤水はこのとき50歳。当時としてはどこに出しても恥ずかしくない老人の仲間です。
すごいな。

 日記は赤水の人格性格行動ぶり人柄がよくあらわれていて、冗談など一生で3回も言ってないくらい、とてもとても真面目で謹厳実直。

 道中記は神社仏閣故事や合戦の名所旧跡などがほとんどで、おもしろそうなできごとがこれこれこんなふうにあったのだぞなどはなし。

 読み終わって、ホッとしました。肩が凝りました。
真面目一筋に生きた方であろうことはこの一冊で十分わかる。
この本、赤水の原文とその翻刻そして現代語約がそろっていることも貴重。


 付録の「安南国漂流日記」のほうが面白かった。
18世紀中頃のベトナムの生活が興味深い。

その中で次のような箇所があった。
「田畑は肥えているので糞なども用いないと見ました。ですから、小便所もなく、貴賤男女にかかわらず、大小便を猥(みだ)りにそこいら中にしています。だから路ばたは臭くてたまったものではございません。」
漂流民がお世話になった街は特に裏寂れた田舎というわけではなく、むしろ栄えていたのにこのようなありさまとは恐れ入る。


0 件のコメント:

コメントを投稿