2023年12月5日火曜日

絵師・彫師・摺師

 日本の木版画は絵師・彫師・摺師がそろわないと完成しません。

 絵師は木版で何百枚も摺ってもらうこともできますが、木版でなくても和紙にじかに描いてそのまま一枚物で完成させることもできます。

 彫師はわたされた絵を板に貼り、絵師からの指示も聞きながら彫ります。

 摺師も同様に絵師の色やぼかし具合などの指示にしたがいながらも、摺師の感性もくわえて木版画が完成します。

 つまり木版画は三者がもしくは出板人をくわえて四者がそろって完成し、後年名前が残るのは出板人と絵師であることが多いのです。錦絵や浮世絵では絵師を「◯△□筆」と大きめの字がのり、「出板人☆▽◎」「画工□▽」(版下絵師、浮世絵師)が小さく枠書きであったりし、この画像のように彫師の名前「彫栄」(渡辺栄蔵)などと入ることもあります。

 しかしながら、やはり絵師は木版画にしなくてもやっていけますし、絵師の下絵があって彫師・摺師となるので、悪く言えば主従のようになり、絵師の名前の存在は大きいのです。

 江戸後期より明治になって、欧米よりあらたな印刷活版技術が入ってきてみるみるうちに木版による印刷方法はすたれていってしまいました。これだけのすばらしい技法が完全になくなってしまう前に、わたしにありあまる資産があるならば、先頭に立って支援するのですが、う~ん、悲しいかな、こんな文章を書くのが精一杯なのであります。

 現在では人物像を寸分もたがわず制作することが可能で、それも何体もつくることができます。しかし彫刻家などがつくった人物像を並べてみれば、どちらが人が作ったものかをあてることは簡単です。彫刻家がつくったものの複製を並べてしまうとわからなくなるとおもいますけど。

 木版画も同様です。木版画の世界を残したい。

 

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