2018年9月1日土曜日

「日本誌」 その4

エンゲルベルト・ケンペル 著
今井 正 編訳
上下巻 合本 1989刊

 1691年4月24日 江戸城内。将軍謁見の数々の演出の数幕が終わった所で、
「われわれは将軍の御座所の方から数えて3列目の畳の前に座るように指示された。われわれの前には食膳が据えられ、その上には、次のような菓子類が並べられていた。
1)胡麻入り煎餅2枚
2)角砂糖1個
3)巴旦杏(アーモンド)に似ている皮付きの榧(かや)の実
4)四角の小さい菓子1個
5)糖蜜を用いた茶色の漏斗状に巻いた厚手の餅菓子2個、丸みのある側には日輪と薔薇の形、他の側には内裏の紋章である桐の花の形が置いてあった。
6)四角い赤褐色の乾菓子2個
7)黄色い焼団子2個
8)芯に求肥を入れた四角い切り餅の焼き菓子2個
9)餡入りの大型饅頭1個
10)普通の大きさの饅頭2個。
 われわれは出されたこれらの菓子類をそれぞれ少しずつ試食し、各人が残した分は通詞が白い厚紙と紐を取り寄せ、丁寧に包み、自分等の荷物として持ち帰ることになった。」


 将軍は綱吉であるが、ケンペルは綱吉をべた褒めしている。また鎖国政策にも理解を見せ、その評価を論文として発表してもいる。

 大小饅頭以外は、上品な和菓子だったのだろう。
残した分は今ならば懐紙などに包んで持ち帰るのだろうが、300年以上も、いやもっとか、そういった習慣が今もって続いているのは興味深い。

 順序が逆になったが、謁見の演出の数幕はこんなふうにして行われた。



 中央両手を広げて(歌ってい)るのがケンペル本人。
左のすだれの奥に将軍や大奥がいる。
歌ったり踊ったり、かつらをぬがされたり、ちょっとした小芝居をしたりと、
数々の将軍の要望にこたえた。


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