2019年8月7日水曜日

母の習字4

 うーん、これも読めなんだ。



 通常は空豆かそら豆って書くよな。

 「蚕」(かいこ)からそら豆への発想は思い浮かばんな。
そら豆は天に向かって伸びてゆけど、でもねぇ〜。

 母の実家に行ったりあずけられたりはしょっちゅうだったが、お蚕さんの時期は楽しかった。
屋根裏みたいな天井の低い大きな部屋があってそこに蚕だながあった。
毎日新鮮な桑の葉を桑畑から採ってきて、この蚕棚にまいてゆく。
子どものボクの手伝いは、桑の葉をとってくるのと、この部屋まで運ぶこと。

 夜になると、家中が静かになっても、蚕たちが桑の葉を貪り食っているサワサワサワサワという音が聞こえてくる。これが子どもの耳にも心地よい。いつまでも聞いていたいのだがまぶたには抗えない。

 繭玉をお湯に入れ、蜘蛛の糸みたいに細い糸をモルモットの回りグルマみたいなのに引っ掛けて
クルクル回して繭玉から糸をほぐしとってゆく。これもおもしろくお手伝いが楽しかった。

 絹糸は集荷して売り物になるのだが、母は娘の頃に自分の着物の生地をバッタンバッタンやって織ったと言っていた。別段珍しいことではなく当たり前なことだったのだろう。
つい最近まで母はその着物の一部分を大事に思い出の品として持っていたし、ボクも手にしたことがあった。

 あれはどこにいってしまったのだろうな。


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