読めなかった。
読めればフクロウとわかる。
母の実家は農家だった。
母屋の北側に、勝手口から少し離れたところに湯屋が独立してあった。
五右衛門風呂だったが、脱衣するところも半畳ほどのたたきがあった。
その湯屋と井戸の間、井戸よりの方にイチジクがあった。
母が娘の頃、夕方になり風呂を沸かすべく焚口に薪をくべ火吹き竹でふぅふぅやってると
必ずイチジクの決まった枝に止まってホォホォと鳴き返すのがこのフクロウだった。
ボクが母の田舎にあずけれれたときには、もうこのフクロウもその仲間もくることはなかったけど、ハナムグリやカミキリムシがたくさんイチジクの熟れた実にとまっていた。
このイチジクの木を見るたびに、母のこの話を思い出し、ひとりその木の周りでフクロウの鳴き真似をしていた。
母は青葉木菟のまんまるの目を思い出し、ホォホォとなくあのときのフクロウを聴き、筆を運び、その墨書の中に娘時代の自分を見ているのかもしれない。
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