ちょうど20年前くらいのことかもしれない。
あわただしく仕事を終えて、上演開始時間滑り込みセーフで間に合った。
しかし、腹ペコ。
映画の挿入歌が身にしみた。
『六月二十三日 またず
月桃の花 散りました
・・・
・・・』
終演後、ステージで主催者の挨拶後、この歌を皆で歌った。
その後しばらくして、地元で
小学校高学年の息子と一緒に
この映画をみた。
息子は関心がなかったようで
お父さんの目がキラキラしていた、としか言わなかった。
その年の夏休みだったか
沖縄戦跡ツアーにその息子と一緒に行った。
旅行中に困ることもあるかもしれないと
腕時計を出発する前に買ってあげた。
自分専用の腕時計は、初めてで喜んでいた。
長針と短針に蛍光塗料が塗ってあり、暗いところで光るのが
気に入っていたようだ。
現地で 月桃の花を見た。
房になって咲く白い花はきれいだった。
ツアーの中で、ガマに入った。
ガマの出入り口からすぼむように狭くなり、体をかがめて中に進んだ。
急に広くなり、ガマに逃れた人たちが暮らした空間に着いた。
しかし、光はない。
案内人から懐中電灯を消すことをうながされ、光がなくなった。
真っ暗である。
その時はただ静寂があっただけであったが、
当時は、爆弾や銃撃の音が凄まじかったかもしれない。
音だけでなく、振動も相当のものだったろう。
真っ暗の中で・・・
同行者が抱いていた赤ん坊が泣き出した。
母親の乳房で赤ん坊の口をふさいだという話を思い出し、身につまされる。
懐中電灯を灯してから、息子が言った。
お父さん、腕時計の針が光っていてきれいだったよ。
子どもに無理やり当時のことを想像しろといっても、
無理なものは無理なのだろう。
今一番の関心は、腕時計の蛍光塗料の光だったようだ。
身をかがめて、出口に向かっているとき
息子が、お父さん と呼び止めた。
なんだろうと振り返ると、あそこを見てというふうに
目で合図している。
骨があった。大腿骨あたりだろうか。
息子と一緒に手を合わせた。
水族館へ行った。
ジンベイザメを見た。
息子は食い入るように見ていた。
想像していたより、余程大きかったのだろう。
ガラスに顔を近づけて見ることはしなかった。
でも、ずっと見ていた。
そんな沖縄旅行
息子はもう忘れてしまっているだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿