先ほどと同じように、丁寧に紐をとき蓋をあけ、同じように蓋裏の米粒から食う。
ちょっと悩んだが、辛子と醤油も同じようにした。
うぅ〜ん、筍煮は飽きない味だなとおもいつつ、またたくまに完食してしまった。
いつも杏は最後にとっておいて、デザート代わりにして食す。
この杏がなくなったら、ボクはシュウマイ弁当は買わない。
もしそうしたら、崎陽軒は潰れるだろうとおもう。
ボクは潰したくなくても、世の中は許さない。
弁当番の知人の目つきがちょっと変わったようにおもった。
なんだこいつはというふうにいぶかるのではなく、こいつはいったいこの定期大会に何しにやってきたのだという目だ。
そんな目線にボクは負けない。
4つ目をどうしようかと、少しは低くなった弁当の残りの山を見ていた。
どうだ、こんなオレでも少しは役に立つことができるんだ。
ハッとして、気づくと、弁当番の知人がボクに呼びかけていた。
もう人も来ないし、残ってももったいないから、無理じゃなかったらどうぉ〜ぞ。
なんでそんなに語尾をのばすんだよ。
それに少し声がでかいよ、あなたは人の気持ちてぇーもんを考えないのですか。
あっ、えぇー、オッとぉー、でもいぃーんですか。「う」で始まる感嘆の言葉を忘れていることにも気づかないくらい、ちょっと恥ずかしかかった。
遠慮なくいただいた。しかしその場では食わなかった。
別に食えなかったわけでもシウマイ弁当に飽きたわけでもない。飽きるわけがない。
ザックの中にありがたくしまった。
大会の会場へ入る。
喧々諤々熱気が立ち込めている。
静かに集中してシュウマイ弁当を食っていたホンノ少し前のひとときを噛みしめた。
小一時間もいたろうか。
不まじめな組合員であるボクは、なんのためらいもなく、会場を後にした。
夕方のラッシュが始まる前でちょうどよかったや。
来るときには結構強く降っていた雨も今は止んで、少し肌寒くなっていた。
(つづく)
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