この会場の最寄り駅から各停で3つ目が終点の横浜駅だ。
10分もかからない。
空いている車両を選んで座り、ザックを膝の上に置く。
あれっ、いつもよりなんか重いぞ。
ザックのチャックを開けかけてすぐにおもいだした。
そ、そうだった、彼に無理やり持たされたんだっけ、恥ずかしかったけど。
目顔でことわったんだけどなぁ、しょうがないなぁ彼は。
なんか急に食べてしまいたくなった。
ボックス席ならなんのためらいもなく、そんなことをおもった瞬間に弁当を食べ始めている。
しかし、今座っているのは通勤車両の典型的な長椅子である。
それにすぐに横浜駅についてしまう。
そんなことを考えていたらもうひとつ目の駅に電車は大きなカーブをキィキィときしみながら曲がり終えて停車しようとしていた。
なんせこの区間は20秒もかからないという短さなのだ。
あぁー食いたい、さっき食ったばかりなのに、エ〜っとっ、いくつ食ったんだっけ。
ザックの中でシュウマイ弁当を握っているボクは、焦燥感に汗が吹き出していた。
そこの帰宅途中の女学生たちよ、ボクがザックの中でシュウマイ弁当を握っているなんておもってもいないだろう、ははは。
反対側の席でバカでかい声でくっちゃべっている男子学生諸君、
ボクが昼飯にシュウマイ弁当をもう3箱も食ってきたことなんかしらんだろ。ひひひ。
しかし、ここで食いだしたら、終点の横浜駅までに食い終わることができるかどうか微妙なところだ。大好きなシュウマイ弁当をかっくらって味わうことなしに食いたくはない。
そんなことは決してあってはならぬ。
あんなことやそんなことを電車が停車してドアが空いているあいだ、ふっと考えていた。
閉まる寸前、ボクは飛び降りた。
しっかりとザックの中でシュウマイ弁当を握りしめたまま。
(つづく)
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