パニコス・パナイー著
栢木清吾(かやのきせいご)
創元社 ¥2400
とても細かくひとつひとつ仔細にわたる語り口。そのようなところは斜め読みすればよいのだろうが、ついつい読み返してしまう。なので読みづらい。
食について語っているといつしか移民の歴史に話がうつっている。日本の餃子やラーメンなどの食についてたどるとやはり中国からや台湾からの移民移住者の活躍、また日本人の満州地域への移住という侵略に関係してくるのと同様だろう。それにしても19世紀前後からの英国への移民流入者はなかなかにすさまじかった様子がわかる。今に始まったことではなかったのだな。
ウナギが17世紀の頃にはすでに養殖されていたというのがおもしろい。ウナギはフィッシュアンドチップスとともに貧困層の栄養源であったが、日本では昔より高級品の扱い。ウナギでもマグロでもなんでも輪切りにして食ってしまう国民と開いて捌いて平にする国との違いだろう。
フィッシュアンドチップスがユダヤ民や貧困層のくいもんだったということからそれらの食べ物とかれら民族の一体感みたいなものが納得できるが、「英国らしさ」を示すものとしての食べ物がフィッシュアンドチップスであるというととても違和感がある。何も「らしさ」をあらわす食べ物がないのでやむなくそれにしたという感じ。後付だな。あれだけ百年以上も食べ物と一緒に労働者階級や貧民窟やそこに住む人たちを蔑んでバカにしてきたのに、よくもまぁ白々しくフィッシュアンドチップスが「英国らしさ」を表すものだといえるところが「英国らしさ」を示している。どうしようもない国だね。著者の庶民の語りを丁寧にひろう姿勢は好感をもった。
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