この一行で終わってもイイのだけれど、終わりません。
大声を出し腹かかえて笑えるかとおもうと、
知らないうちにたまった涙が、おもわずポロリというところもある。
読みながらおもったな。
小説だけではなく、美術でも音楽でも工芸品でも
まぁいわゆる芸術なるもの、
その内容や様式に従っての種類分けはつまらんし、くだらんな。
純文学・児童文学・時代劇作家・恋愛小説・SF作家・・・
中には小中学校の道徳読み物作家というものもあって、これはホントに馬鹿馬鹿しい。
浅田次郎という大きな小説家という塊があって、
あっちの部分ではこんなものを書き、そっちの部分ではまた異なったお話を書く。
いろんな趣のものを書くが、どれもハマる。
浅田氏が努力精進日々邁進しているたまものなのだろう。
たいしたもんだ。
たくさんの登場人物が出てくるが、
主人公の木戸孝之介は別として、
美加、その母の清子、育ての親の富江が好きだ。
美香はいじらしく、けなげだ。
孝之介にあれこれ言われ、
「あい。・・・」と返事する、これがたまらんな。
灰皿でたたかれ、日記帳ではたかれ、足でふんずけられ
そのあと、しばらくしてから
「あいたっ。・・・」このまあい、数行読み進めてからまたここに目が移ってしまう。
痛みが鈍行で脳みそ伝わっていく様がやはりたまらん。
富江が失踪したとき、美加の手を引きながらあちこちを探した。
くたびれ探し回ったところは、実の母親が男と家を出ていってしまったときに
まだ小学生であった孝之介が探し回ったところと同じだった。
富江を受け入れまいとする偏屈な心と
実の母親以上に体は母として受け入れ、欲している孝之介の心情が痛々しい。
放免桜の枝にだかれた孝之介一家の向こうに、雪を頂いた稜線が見える。
一家の幸せを願ってやまない。
よし、決めた。
5年ぶりに奥湯元温泉に行く。
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