2018年7月24日火曜日

幕末横浜オランダ商人見聞録  その1

河出書房新書 2018.4.30
C.T.アッセンデルフト・デ・コーニング 著
東郷えりか 訳

 古い本かとおもっていたら、数ヶ月前に出版された本ではないか。
原著はオランダ語なので誰も翻訳しなかったようだ。
英訳されたものを日本語訳したというわけ。

 開港されたばかりの横浜の姿を生き生きと描いている。
ただ、教養と学識あふれんばかりの著者があちこちで引用する言葉がわずらわしい。
また、一つの事柄を内省的に文学風に著述されているところも少々うっとおしい。

 しかし、横浜での台風・地震・火事・自警団・詐欺など様々な出来事の記述は
前記の不満な部分を補ってあまりある。
そのなかで二つの事柄をあげる。

 一つは、開港されたばかりの横浜の様子。
「最初の数ヶ月間に横浜に住み着いた開拓者たちのじつに多くが、ヨーロッパでは決してみかけないようなタイプの寄せ集めで、アメリカの『最西部』や南米のパンパスで羽振りを利かせているような者たちだった。」
西部劇に出てくるガンマンがゴロゴロしてたのとそう変わらなかったのかしれない。
ごく些細なことでも
「長いナイフや拳銃を取り出していたので、これらは最も危険な連中だった。」
横浜開港間近にこんな連中がのさばっていたなんて知らんかった。


 さらに、もう一つのタイプとして
「文明社会の寄生虫と呼べるような男たち」であったという。
それにしても、なんともすごい表現で著者のどうしようもない気持ちと感情が冷静に爆発している。
彼らは、
「世界の大都市からの堕落した紳士たちだった」
で終わるかとおもったら更に続いて、
「王侯のように飲み食いして、自分以外の誰かの費用で、その日暮らしを送っていた。」
なんともはや、無頼漢以下だな。

 本書にも写真はあるが、資料としては横浜の開港直後や賑わいの写真は比較的豊富で、写っている人たちはお決まりのスーツを着ておさまっている。ゴロツキたちの写真も見てみたいが、著者はそのうちの一人の風体の様子を詳しく記している。写真はなくともこれで十分かもしれぬ。

 彼らはなぜ日本来たか。
アメリカ西部で金鉱が発見されるや、大勢が押し寄せたゴールドラッシュがあった。
日本の開港直後にもゴールドラッシュがあったのだ。
彼らは、これをめざした。

つづく

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