2018年7月15日日曜日

幕末日本探訪記

ロバート・フォーチュン
三宅 馨 訳
講談社学術文庫

 「第十四章 日本歴史の一頁  古都鎌倉の旅」の 食後のひる寝 のところを抜き書く。
「出発前に昼食を注文しておいたので、帰ると十分な御馳走が待っていた。この海でとりたての上等な魚を、日本の醤油で調理してあったが、実に美味であった。それに精選した白米にオムレツ、これは少々甘すぎたが、とにかく、すこぶるうまかった。宿の井戸から汲み上げたうまい冷水に、持参したブランデーを混ぜて、喉に流し込む。われわれは日本酒よりもやはりブランデーを好む。鎌倉の宿には、西洋の食卓に見られるナイフ、フォークのような幼稚な食事用具はなかった。
・・・
食事の間、宿の女中が給仕をしてくれた。強いて正直に言えば、彼女たちは取り立てて美しくはなかったが、親切丁寧に、われわれの望み通りに働いてくれた。」

 眼の前の食膳が目に浮かぶな。
新鮮な魚の煮付けに、卵焼きだろう。
うまそうだ。

 ブランデーを冷水で割っている。

 ジジイは若かりし頃、フランスに遊学した。
お世話になった主人に1800ウン年もののブランデーを御馳走になったことがある。
主人うんちくをたれ、
「わたしの父や爺さんからなんべんもきかされてきたことだが、
ブランデーは決してわってはいかん。
こうやって手の中でころがすように、香りがたつように楽しむんだ。」

 現地で見聞するに、南フランスなどでは
赤ワインを水で割って飲むことはいたって普通のことだった。

 イギリス人であるロバートさん、
きっとブランデーもそんな感じだったのかもしれぬ。

 ところでこの本、とても読みやすい。
偏見なく物事を見ている。
文章の組み立ても上手でおもしろい。
幕末に訪れた外国人の探訪記はたくさんあるが、
それらのなかでもまちがいなく上位にはいるものだ。


 晩年は本国で、手持ちのアジアの骨董品や珍品を売りながら
悠々自適な生活だったらしい。
1880年没。

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