2020年2月6日木曜日

「炎の中の図書館」スーザン・オーリアン を読んだ

炎の中の図書館_110万冊を焼いた大火 (原題 The library Book)
早川書房 ¥2600E 2019.11
スーザン・オーリアン 著
羽田 誌津子 訳

 ロサンゼルス中央図書館のおはなし。
放火犯の被疑者、歴代公立図書館統括長、何十人もの司書さんたちなど沢山の興味深いはなしを著者が語ります。

 米国の図書館が、日本で言うところの本の貸出を中心とする図書館をはるかにこえ、50年以上前からホームレスの居場所の提供などコミュニティーセンターとしての役割をしてきていることに驚かされます。

 また、黒人差別で1960年以前は黒人は図書館で貸出ができなかったという事実も知りませんでした。ネットで調べると「公立図書館史研究における黒人-人種隔離を中心として」という論文がありました。話はそれますが、第二次世界大戦のとき米国の軍隊の中では黒人差別は一体どのような状態だったのか関心が高まりました。

 米国の2010年調査では、約3億のアメリカ人は1万7078館の公立図書館や移動図書館のどれかを使ったとあり、公共図書館はマグドナルドの店舗数よりも多い。書店と比較しても2対1で多い。
また図書館は旧式だが、最近、30歳以下の人々のあいだで人気が高く、若い世代の方が年配者よりも頻繁に図書館を利用している。などなど普段マスコミが取り上げないであろう事柄が記されてます。

 図書館は今後どのような活動をしてゆくかという命題に対しては、日米の社会構造が異なれば、その参画の方法も異なるのは当然のことですから、日米のどちらが進んでいるかどうかという視点ではなく、米国の市民社会という歯車にしっかりとくいこんで図書館活動がそれを回し、また回される取り組みを半世紀以上前から行ってきているということは、おおいに学ばなければならないところだと考えます。

 羽田誌津子さんの翻訳はたいへんに読みやすく、訳者あとがきのご本人の文章を読むと、文章の流れや息継ぎがスーザン・オーリアンさんと同じような感じなので、なるほどなと感じた次第。

 本の題名について。
洋画の原題と邦題名についてもほぼ同様なことがいつも気になります。
「ザ・ライブラリー・ブック_110万冊を焼いた大火」とわたしならしました。


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