ちょうどこの頃だったかもしれない。
朝早く日の出前の時間に、母が畑と呼んでいた花壇で
朝顔の支柱にとまっている蝉の幼虫を見つけた。
ふだん、こんなに早く起床することはないので
きっと、父の車に乗って母の田舎に行く日のことだったかもしれない。
蝉の幼虫の背中が割れ、ジワジワと脱皮を始めていた。
はじめてのことだった。
一心に身じろぎもせず見つめ、息をするのもそぉーっとした。
屈んだまま石のように身を固くして凝視した。
薄明かりの中で、いつも見ている蝉になってゆく。
子どもの頃の、ほんのひとときのことだったが
今でもその感動がしっかりと胸の底に残っている。
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