2019年12月3日火曜日

ガッツ石松さん

 最近テレビに出てないねとヤフートップで近況を語っていた。
お元気そうで何よりです。

 ジジイはガッツさんのこんな話が好きで好きでたまらない。

ガッツさん、国から出てきたのはいいけどボクシングやらバイトやらで厳しい生活でまた貧しい。
食べるのもやっと。
食べないときも多かった。
でも、国を出るとき母親からもらった千円札をお守りのように大事にしていて、どんなに腹減っても困ったときがあっても、絶対に使うことはなかった。
だって、お守りだからな。
しかし、使うことはなかったけど、使いたい。
悩んだ。
悩んで、思いついた。
夜、寝る前に枕の下に寝押しするみたいに、そのお守りの千円札を敷いた。
そして、願いをかける。
明日の朝にはきっともう一枚増えているはずだ。
朝目が覚めると、恐る恐る枕の端からそぉーっと持ち上げて見た。
千円札が見えた。
ドキドキする。
でも、その千円札はお守りの千円札で、増えてはいなかった。
ガッツさん、日頃の頑張りが足りないから、願いが届かないのだと落ち込んだ。
毎日必死に働きボクシングに打ち込んだ。
明日はきっと増えていると、千円札を枕下に敷くのは眠る前の儀式のように続けた。
それでも、増えなかった。
お守り千円札は寝押しがきいて、全面に細かいシワが入ってしまったが、ピンとしていた。
どんなに疲れてくたくたになっても、寝る前のこの儀式だけは欠かさなかった。
朝、増えてはいないだろうとわかっていても、ドキドキしながら枕を持ち上げ続けた。
ボクシングも目の前が真っ暗になり水をぶっかけられて、やっとそこがリングの上だと気づくくらい打ち込んだ。

頑張って頑張って世界チャンピオンになった。
お守り千円札は額の裏にしまった。
千円札の何百倍ものお金を母親に渡した。

千円札は本物のお守りになっていた。


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