2019年12月5日木曜日

「ふぉん・しいほるとの娘 上・下」吉村昭 を読んだ

 感動したな。
とても長編だけど内容はぎっしり詰まっていて、
腹いっぱい胸いっぱい心もいっぱい涙もいっぱいになった。

 ジジイが若かりし頃、まだ地球の歩き方などの旅行本などないとき、リュックを背負って
西欧を貧乏旅行していたときがあった。
正確には1974,75,76年の、7,8,9月頃だったようにおもう。1973年も旅したがこのときにはオランダへはでかけていない。
もう45年前にもなるのか。

 シーボルトに興味があって、アムステルダムとライデンを訪れ、博物館や植物園を見て回った。
シーボルトが日本から持ち帰ったものが暗い室内に雑然と並べられ、狼の剥製などもあったが、
どれもこれも手入れは悪く、博物館にとってはシーボルトなどはどうでもよい扱いであることがわかった。シーボルトが持ち帰ったといわれる、銀杏の木があったようにおもうが、記憶違いかもしれぬ。
 彼の生地、ヴュルツブルクへも行った。きれいな街だった。


 それにしても、シーボルトの娘のお稲さん、波乱に満ちた生涯だった。
亡くなる直前まで意識も体もしっかりしていて、大好物のうな重を食って、デザートがスイカだったという。あっぱれだな。

 父親のシーボルトはどうしようもないな。
能力はあったようようだが、自己顕示欲が強く、感情は瞬間湯沸かし器、下半身は暴れん坊で誰彼構わずの種まきおじさん。
でも、自分の持っている知識や技術は当時の勉学熱心な日本人たちにわけへだてなく与えた。
彼本人はそんなだったけど、お稲を始め、息子たちも真面目に生きたようだ。腹違いの兄弟姉妹だったが彼らの結びつきがこれまたよい。ジーンときた。

 濃いお話であった。


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