2018年6月2日土曜日

「歴史人口学で見た日本」速水融 を読んだ

 日本の核家族化が進んだのは、かの田中角栄首相の号令一下、
日本列島改造論によるものだと単純に考えていた。

 江戸時代、1700年までの数十年で、日本各地で人口が爆発的に増えるのだが、
そこのところから論考を始め、至って論理的に、
一家が4.5人がもっとも効率的に農業生産できる家族規模であるとの結論を導く。
もっとも、調査分析したのが濃尾地域だからそこのところに限ったことかもしれないが。

 昼寝から寝起きの頭で読んでいたジジイは、
ここのページに後頭部を殴られ目から火柱がほとばしった。

 「歴史の中の江戸時代」でも述べられている事柄だったが、
こちらの本のほうが、よりわかりやすく、詳しい。


 速水氏は「私としては私の発見のながではいちばん興味深いもの」として次のようなメカニズムをあげている。(P.124)
「この村、地域、濃尾地方全体、あるいは京都、大坂、名古屋を中心とする地域全体の人口はそれほど増えていないということである。つまり小作農が都市へ行って、都市は死亡率がひじょうに高いからそこで死んでしまう。そして、そのあとを、あまり出稼ぎをしなかった地主や自作の分家が埋めていくということになっていた。」

 さらにこのシステムのことを「ダルマ落とし」にたとえている。
「小作農は都市へ行ってしまい、そこを上から落ちてきたものが埋める」という訳だ。

で、話はこれらのことが明治維新につながるというところまですすむ。


 なかなかいいね。
氏は勤勉革命という考え方の提唱者として有名だが、このシステムもうなるな。

 この本、速水氏が歴史人口学研究の端緒となった頃の話から、研究内容の具体例とその成果、
そして今後のこの分野の発展と危惧が丁寧にかかれている。
どうしてこんなに良い本が第一版でとまっているのかが不思議です。


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