2016年11月5日土曜日

大相撲 力士の国籍云々は言わないで下さい

 日本出身力士という言葉を聞くたびに、相撲がつまらなくなる。
もとを正せば、先々代くらいの親方衆が国内でスカウトしていたのを、
外国まで手を広げなければならなくなったことにある。
国内スカウトが昔のように集まらなくなってしまったのだ。
相撲の将来の危機感からだろう。
ハワイ、モンゴル、欧州と順に親方たちは出かけていった。

 スカウトにあたっては、白い飯が腹いっぱい食えるし、汽車や飛行機にも乗れる、
とは戦後しばらく親方衆の決め台詞だったことは有名な話だ
そうやって発掘したハワイやモンゴルの力士たちの活躍を見て、
モンゴルなどでは近畿大学などへの相撲留学がさかんになった。
さらに、自国の外国人力士の活躍を見て、自ら力士部屋の門をたたく者も増えた。

 相撲協会も親方衆も全面的にスカウトしてきた外国人力士の卵たちを責任をもって育てた。
日本独特の文化しきたりを教え、日本語の会話・読み書きも教えた。
卵たちは、相撲協会が期待した以上にこたえ、賜杯を高々と持ち上げる力士もあらわれた。
彼らの猛烈な努力を讃え、勝ち取った地位を賞賛されこそすれ、
日本出身力士でないことをことさらに言われ続けることに、彼らはどんな気持ちだろうか。

 もともとはこちらからお願いして日本に来てもらい相撲取りになってもらった。
お願いしてきてもらった力士たちにむけて、マスコミは当たり前のように本人たちの真ん前で、
更には千秋楽で、NHKアナウンサーが久しぶりの日本人力士の優勝ですと繰り返し言う。
礼を失するとは、このようなことを言う。
モンゴル人力士の懸賞を受け取るときの手刀の切り方がなってないと言う前に、正すべきはこちらの方だ。


 白鳳と琴奨菊の取り組みで琴奨菊が勝つと、必ず日本人力士云々がテレビや新聞で叫ばれる。
モンゴルと日本の対戦ではなかろう。
オリンピックではどの国も自国の金メダル数を誇るが、あれはオリンピック精神にもとる。
国別の競技になっているから、どこそこの国が勝った負けたをいうことはそのとおりだ。
その結果であるメダル数を競うなど、競技以外のことではないか。
自国の優秀さを誇るのではなく、自分の国にはこんなに素晴らしい力のある人間がいることを
国として自慢すれば良い。
それでおしまいにすればよいのに、余計なことで有頂天になってしまう。

 白鳳と琴奨菊の取り組みは国別対抗試合ではない。
大相撲の関取同士、一対一の争いだ。
国籍・出身地・出身校・学歴など無関係な、横綱と大関のまわし一丁の一番勝負を、
どうしてつまらなくする。
白鵬が優勝すると、琴奨菊が勝ったときと同じように、
モンゴルです、モンゴル出身力士の優勝です、と連呼するのだろうか。

 相撲は裸の勝負だ。
脱ぎ捨てた他のことなどどうでもよい。
力士たちのぶつかり合いをこれからも見つづけたい。



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