2018年5月22日火曜日

日本史再発見 板倉聖宣 著 を読んだ

 板倉氏の著作には、若かりし頃より、長いこと親しんでいます。
「模倣の時代」「歴史の見方考え方」その他小冊子たくさん、どれもグイグイ読み進むことができる本たちです。

 この本も同様で、江戸時代は1720年頃が前後半の分かれ目になり、それはなぜか。
説得力があり、肯いた次第であります。
と同時に、疑問点もたくさん。


 ひとつぼやっとなんでだろうなと、感じたことがあります。
この本が出版されたのが1993年で、この本は科学朝日に連載されたものに手を加えて出版したものです。なので、内容的には90年前半頃又は90年前後に執筆されたものでしょう。

 本書は江戸時代の人口統計調査を用いて、それを基礎に様々な論考と実証を重ねていきます。
ですから、同様の方法でやはり江戸時代の人口の増減等より社会経済等を見てゆく、歴史人口学という新しい歴史学の分野と重なるところ大であります。

 ところが、本書で「歴史人口学者」という単語がでてくるのは、p.169の一箇所のみで、
歴史人口学者の研究成果や資料に触れることは一切ないのです。
歴史人口学は1970年頃過ぎより出版され始めているので、本書出版年より約20年前のことです。

 本書を執筆するまでに、少なくとも20年弱あったわけで、 
板倉氏ほどの資料を渉猟される方が、速水融氏の歴史人口学について知らなかった訳がない。
また板倉氏は資料の出版元を必ず提示します。
それを頼りに、勉強に励み役立ったこと数知れません。

 お二人の研究姿勢は多分に重なるところがあります。
ある地域や地方または国全体など動向を探るのに、歴史資料の数量的なものを基本にしているところです。
実際、本文は随所で速水氏の「歴史の中の江戸時代」と重なるところがあるのです。
板倉氏がそのことを知らなかったとはどうしてもおもえない。
編集部の方にしても同様です。
なにか吹っ切れないものを感じるのであります。


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