ケヤキの話だけで一冊の本だ。
正確にはケヤキの文化史を幅広く論じ、
最後の章では育て方やケヤキの造成林の育成方法を詳しく述べている。
ケヤキだけで一冊の本にすることができるかどうか、
心配であったと著者の有岡氏は心配されているが、
読後感は、杞憂だったとわかる。
様々な説明をされているところは、是非カラー写真の画像がほしいところであるが
そうすると、本自体のページ数や価格にはね返るのは必死であるから
やむを得ないところなのだろう。
細かい説明文の単語から、ネットで検索すれば写真は得られる可能性は高い。
街路樹や身の回りに見かけることの多いケヤキが、
古代より神聖なものであり、万葉集などでも歌に盛んによまれていることに驚いた。
また防災林として、トップクラスを誇る能力の高い樹木なのだ。
ガラスの電球の型の材として、ケヤキが使われていたという。
5000回程度は大丈夫だそうだ。
和菓子の型取り用に桜材が使われるが、ガラスの型にケヤキとは知らなかった。
江戸時代、山林を管理する地元民と幕府や藩の役人との
やり取りの古文書も興味深い。
大径木のケヤキを切り出し、死刑になったものや磔で命を落としたものもいる。
一方でどんなにお金を積まれても決して売らずに手入れをし、
守られてきたケヤキもたくさんある。
木工でケヤキをよく使うが、思い入れが深まった。
街路樹のケヤキ並木が近所にあるが、樹勢を見上げるだけでなく、
根を張る地中まで、思いをはせるようになった。
7年前に制作したケヤキの小さいキャビネットがある。
埼玉県川越で伐採した、樹齢80年前後の性質のよい材である。
どのような水を吸い、広げられた枝々はどんな風景を見てきたのだろう。
「木が語る」ことができたら
どんな話を聞かせてくれるだろうか。
人の一生はつくづく短いのだと、
キャビネットをなでながら、おもう。
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