ボクはうなだれ、涙ぐんでいた。
おかあちゃんをおこらせて泣かせてしまった。
もう母を悲しませるようなことはすまいと決心した。
「〜〜〜」をおもいっきりウナッていたので、喉がまだ痛かった。
それからまもないある日。
兄は兄なりにほんの少し反省したのだろう。
ストローのときには食べ物で遊ぶという粗末な罰当たりなことをしてしまった。
テープレコーダーでは父の尊厳をそこなった。
方針を転換したのだ。
道具はまたしてもテープレコーダーだった。
テープレコーダーにはカウンターというものがある。
カウンターに表示される数字を目安に、どのあたりから何が録音されているかがわかる。
空のテープリールを回すとこのカウンターも数字が通常と同じようにカウントされる。
軽く回すとカウンターの数字は「0022」、少し勢いをつけると「0041」、
もう少し強めに回すと「0059」のように表示されるのだ。
クルクルっと小気味よく数字が上がってゆく。
兄が実際にやってみせ、
なっ、おもしろだろ、おまえもやってみろ、
とボクにふった。
うん。
やりだすと、すぐにボクは夢中になってしまった。
夢中になったけど、テープリールがクルクル回りだしてから止まるまでの間に
ボクは考えた。
今度は大丈夫だよな、
食べ物は粗末にしてないし、お父ちゃんをバカにするようなこともしてない、
ダレモキズツケルヨウナコトハシテイナイ・・・
もう一度回して、ボクは念じるようにそのことを繰り返していた。
カウンターは「0063」で止まった。
(つづく)
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