母は帰宅して、包帯でぐるぐる巻きのあげたままのボクの右手をみて、固まった。
どうしたの、今度は何をしたのっ、
母はボクの右手の血がにじんできていた包帯をほどきながら、兄のボソボソした声をきいていた。
母の声は落ち着いていた。
縫ったほうがいいかしら、うーん、これくらいなら圧迫しておけばくっつくわ。
母は丁寧に消毒して、また包帯で右手をぐるぐる巻きにした。
兄が巻いてくれたより、きつく巻かれているような気がした。
ボクの右手はあげっぱなしになっていた。
それからというもの、兄の元気がどことなくなくなった。
ボクをかまってくれることもなくなった。
ボクが兄のそばにいくと、目玉だけギロッと向けるだけで、しゃべってもくれなかった。
どうしたんだろう、おにいちゃん、
ナニカカンガエゴトヲシテイル。
傷の手当は、母が毎日してくれた。
なんかうれしかった。お母ちゃんがボクの手を毎日優しく消毒してくれて、お母ちゃんの手はあったかかった。
ねぇ、おかあちゃん。ボクの人差し指、なんか少し短くなっちゃったような気がするんだけど、
トカゲのしっぽみたいにもとどおりになるよね、ね、ね、なるよね。
おまえ、バカだねぇ、短くなってなんてないよ、あんしんおし。
そぉかなぁ。
お母ちゃんはボクがショックをうけないようにごまかしているんじゃないかと心配した。
だって、お母ちゃんは手当をしてくれているときの顔がどこか引きつっていたんだもん。
(つづく)
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