貧乏な家なのに母が何をおもったのか、森永牛乳の牛乳配達をお願いしたことがあった。
子どもだって、そんなことする余裕がないことくらいわかっていたのにだ。
でも、牛乳は美味しかった。
牛乳と一緒に、お願いすると麦わらのストローを付けてくれた。
牛乳瓶は少し厚い紙で蓋をされ、薄いビニールで瓶のくびれたところでキュッとすぼめて瓶の口が汚れないようにしてあった。
開けるときは、専用の先が尖った針がついている目打ちみたいなものでビニールの上からそのままブスッと蓋の紙まで突き刺して開ける。
牛乳瓶は毎朝2本か3本だったろうか。
夏の配達のときは瓶の表面が汗をかいていたっけ。
はじめは恐る恐る飲んでいたものが、だんだん当たり前になり、そのうち兄がこんなことをやれとボクに命じた。
ストローをつなげて飲むのだ。
何本つなげて、どれくらいの長さまでできるかをやれという。
ボクは喜々として挑戦した。
おもいっきり吸い込んでタイミンが悪いと、ひどくムセて咳き込むことになる。
何がおもしろかったのか、牛乳瓶の周辺がとびちってよごれるのもかまわず、ボクは励んだ。
(つづく)
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