父母と学生のボク3人とで京都へ出かけたときのことだ。
これは珍しい組み合わせなのだ。たった一度しかなかった。
東京駅の新幹線プラットホームが待ち合わせ場所だった。
切符はひとりひとりがすでに持っている。
父、ボクの順で着き、あとは母を待つだけとなった。
指定席に近い号車の入り口で待つ。
コナイナと父は呟き、列車に乗り込みボクが続く。
指定席に座ってすぐ、新幹線は静かに滑り出した。
京都のホテルの夕食時、3人がそろった。
京都の観光は楽しかったですか。
母が誰に聞くともなくお皿に向かって話しかけている。
おいしそうに母の好物であるハンバーグをほおばっている。
ふだんハンバーグは食べないのだが、ここのホテルのは例外だそうで、ここにくると必ず注文する。
さっ、みんなも食べて。おとうちゃんも、お前も箸がすすまないねぇ。
歩き回ったからくたびれたんでしょうね。
遅れたことなど知ったことかいと超越して、無関心である。
わたしは悪いけどソーメンをもらおうかしらと、父とボクにかまわず注文している。
ここのソーメンは茹でるときに端を縛って乱れないようにする。
どうして断言できるかと言うと、以前にここの配膳してくれるボーイさんにきいたことがあったからだ。そのときボーイさんは料理長に確かめてきてくれて、さらに実際に縛ってある素麺をお盆にのせてテーブルまで持ってきて説明してくれたのである。
こんなふうに端をしばってから茹でるんです。
えっ、あっ大丈夫ですよ、こっちのしばってあるほうは、まかないで食べるので無駄にしません。
紅葉を飾り、氷の塊を岩のようにあしらい、そこから流れ落ちる小さな川を表現したように食前に供される。きれいなのだ。そしてうまい。
父とボクは黙々と日本酒をあおる。
(つづく)
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