ちゃぶ台にヨーグルトの瓶をおいた。
牛乳瓶のフタを開けるのと同じようブスッとさして開ける。
ヨーグルトの瓶の口は牛乳瓶よりも大きい。
麦わらのストローを入れる。
段取りはすべて整えた。
心を落ち着け集中した。
ふぅ~と息をはきだし、吸った。
うっ。
強く吸い込みすぎたようだった。
シバラクブリダッタノデ カゲンヲマチガエタ
塊のヨーグルトが喉の奥まで・・・
うっ、くっくっ苦しい。
いっいっイキガデキナイ。
咳き込み吐き出そうとするが、逆にそうするたびに奥に入ってゆくようだった。
息継ぎが・・・、ヤバイ、
ナンカクラクナッテキタ・・・。
ヨーグルトの瓶とストローを前に倒れてたら、いっぺんに何をしていたかバレちゃうじゃんか
ヤバイ・・・。
キガトオクナッテユク。
はっと気づいたとき、ボクは逆さまにされ背中をバンバンたたかれていた。
母だった。
母はどうやら便所にでもいたのが、家にいたようだった。母の長便所をうっかりしていた。
ボクの名前を必死に呼び、背中をたたいている。
フッと息をするのが楽になり、口の中が甘酸っぱいのとヨーグルトが混じった味がした。
またお灸をすえられるかと覚悟したが、母は台所から小さなスプーンを持ってきて手渡してくれたのだった。
これでお食べ、ヨーグルトはストローで吸って食べるんじゃないよ、イイネ。
瓶の中に残っていた、ヨーグルトをカチャカチャ音をさせながらそのスプーンでボクは食べた。
これが我が家に配達されたヨーグルトのくいおさめであった。
母は昨年から介護施設に入った。それまで兄の世話になりながらも一人暮らしだった。
来年100歳になる母は、子育てのときのこんな一コマを覚えているだろうか。
(おわり)
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