2019年6月21日金曜日

テープレコーダー その4


 お前はまだまだだなと兄が回す
カウンターは「0238」。
す、す、すごすぎる。
ボクは力いっぱいやっても「0157」だった。

 兄がレクチャーしてくれた。
ありがたい。

ここに指をかけるだろ、でさぁ、この向きに力をかけるのがコツさ
こっちじゃないぞ、こうやってこっちの方だぞ、
接線方向にこうやるんだ、イイナ。

セッセンホウコウってなんだ?!、おにいちゃんなんだかむずかしいことをいっている、むずかしいことはわからないけど、こっちの向きだよね。

力いっぱい指先に力を込めてさ。
そういって兄がやる

「0256」。
おぉ〜、やっ、やっぱ、お、おにいちゃんはすっ、すごっ、すごすぎっ。

 よしボクの番だ。
アドバイスどおり、力いっぱいやった。
「0175」、おぉー、200に近づいたぞ。
おにいちゃんのおかげだ。

 ちがうちがう、指先をここにしっかりとひっかけろ、ここだよ、ココ。
兄は汗をかき、目がキラキラしている。真剣そのものだ。
テープリールの内側のヘリの部分に指をかけて教えてくれる。

 何度も練習して、ボクは汗びっしょりになっていた。
部屋が熱気に満ちている。
こういうのがジュウジツしてるっていうんだ。
何かひとつのことをなしとげつつあるという、ワクワク感にひたっていた。

 うん、なんかわかったような気がしてきた。
畳の上におかれたテープレコーダーにかぶさるように
立腰になって指をテープリールにかけ、
息をおもいっきり吸い込み、体全体で回転させた。
エイヤァ〜〜〜。


(つづく)


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