2019年6月16日日曜日

純血種という病 Michael Brandow を読んだ 2


 夢想する。
ある日、Breeding により恐ろしく知能の高い運動能力もあり超能力的能力をもつ犬が生まれる。
その犬は生まれ落ちて最初に周りの犬たちか犬らしい振る舞いはどのようなものであるかを学んだ。
そのように振る舞っている限り、自分が周りの犬たちとかわらずに暮らせることを了解した。
その犬は自分の能力を隠し続け仲間を増やすことに専念する。

 十分な頭数になったとき、自分たちを生んだブリーダーたちすべてを殺し、自分たちの手だけでさらに繁殖を続ける。敏捷で賢く人の命令もすぐ覚え何より忠実である。犬売買の取引を繰り返し世界中に仲間が増えた。彼ら同士はテレパシーで連絡ができる。お互いの状況を一瞬にして連絡しあえる。

 超能力の種類は様々で、瞬間移動、人の心を読み自在に人間を操る、人を殺すことなどたやすい。
相当な頭数がそろった頃、全世界で一斉に新ワンコが蜂起した。彼らは形態的に人間の言葉はしゃべることはできないが、テレパシーで意思を通じあえるし、相手の考えていることが読めてしまうので、人間はどうやっても太刀打ちできなくなっていた。

 新ワンコは最先端のAIコンピュータとも意思疎通ができた。
コンピュータがあらゆる分野に浸透していた人間社会は、皮肉にも新ワンコ族に乗っ取られるのはわけもなかった。一瞬にして人類と新ワンコ族は立場が逆転し入れ替わった。

 よくも宇宙船スプートニクでワンコを実験台にしてくれたな、彼女はオレのご先祖様だぞ。

 新ワンコ族は人類よりはるかに高い知性をもつようになっていた。
が、人をブリーディングをすることは決してしなかった。

もしかしたらわれわれ新ワンコ族をこえる新人類が生まれてしまうかもしれぬ。

 新ワンコ族が全世界を治めた当初は、いままでの鬱憤もあって人間たちを奴隷のように扱った。
しかし、しばらくすると彼らの知性はそれでは人間たちがしたことと同じことであり、繰り返しになってしまうことに気づくのはそれほど時間のかかることではなかった。

 新ワンコ族は、その超能力的能力で、人を自由に操り思い通りのことをさせることができた。
ところがどうしてもできなかったことがあった。
新ワンコ族は人の手をもつことができなかった。
サイボーグ的にほとんど人の手と同じに機能するものを手術で取り付けることは簡単だった。
しかし、それではダメだ。
生まれたときに人の手をしてなけれならぬ。
どんなに工夫しても人の手を持つワンコを誕生させることができなかったのだ。
種を超えることは不可能だった。

あの手がほしい、あの手が・・・。
あの5本の指がある手、両の手がほしい、あれで物をつかんでみたい、
くわえるのではなく、強く握ったり、そっとなでたり、両手で温かいマグカップをくるんでみたい。
ここほれワンワンなんて、できなくなったってかまわん。

 新ワンコ族は世代を重ねるごと次第に人類と共存してゆくことが、結局は自分たちのためであり人類のためでもあると学んでいった。
コンピュータで様々なパターンを入力しシミュレータを何億回試しても、出力は同じであった。
共存である。

異なったものが存在すること、多様なものが共存すること、それこそが安泰なのだと。

 数世紀がたった頃、新ワンコ族の一頭が、人間家族と一緒に暮らしていた。
夕食もおわり、居間で昔の映画を見ていた。
猿の惑星だった。


(つづく)


0 件のコメント:

コメントを投稿