2019年6月13日木曜日

麦わらのストロー(straw)その4


 牛乳は配達されなくなったが、何か違うものが玄関先に毎朝配達されだした。
牛乳瓶より高さがない。
瓶には違いないが、底が厚い。
ヨーグルトだった。
ヨーグルトとはじめの遭遇だった。

 ストローは残っている。
気持ちがうずく。
スイタイスイタイスイタイ。
我慢しないでやってみろと、今度は兄姉がはやしたてるのではなく、もうひとりの自分がささやく。

 兄や姉を巻き込むことはしたくない。
お灸の罰、その教えはしっかりとボクの脳髄にも両手にも刻み込まれている。
家で一人になったときを待って、ボクは実行した。

 ヨーグルトをストローで吸う。
母に叱られてから、吸うことをしてなかったボクは、想像するだけでゾクゾクしていた。

 ヨーグルトは液体ではなく半個体のような豆腐のようなものだから、少し強く吸わないと
口の中に入ってこない。
うん、スコシツヨクスウンダ。
何本もつなげたストローで牛乳を吸うという貴重な体をはった経験と知識をもとに、
この行為を繰り返し繰り返し思考実験した。

 兄や姉の手伝いなど必要ない。
ひとりでするのだ。
やればできる。


(つづく)


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